主催者より
いくつかのコンクールでよい成績を収めたのち、薫さんは2023年5月に9歳でありながらデビュー・リサイタルを開催しました。バッハとモーツァルトを中心とした、演奏時間が90分にもわたる本格的な内容で、それを収録した私はその量をこなせることだけでなく、演奏の質、特に自発性に優れていることに感銘を受けました。この時の作品にはリピート(繰り返し)が指示されているものが多く、彼女は毎度違うニュアンスで、しかも「練習した通り」に弾くのではなく、まさに演奏中に得たインスピレーションをもとにそう弾けるように見え、大変な才能を感じました。Mostly Classics 25年9月号で、仙台国際音楽コンクールの審査委員長・野平一郎氏も「100回さらって弾きましたというのでなく、その場で音楽が生成される」と述べています。
以後、私は収録だけでなく彼女の演奏会を3回主催いたしました。一方で彼女は昨年、音大生が主たる対象であるPTNAピアノ・コンペティションのPre特級で銅賞を得ました。小学5年生でそういう域に達したのか、と驚いていたら、今年は仙台国際音楽コンクールで第3位。あっという間に「若手有望株の一人」として世間でも認知されるようになったものと思います。しかもファイナルで演奏した作品が難曲として知られる矢代秋雄のピアノ協奏曲だったことでも注目を集めました。
今回のリサイタルのプログラムは、彼女は「小学校卒業までには全曲を弾きたい」と言っていた「ゴールドベルク変奏曲」で、前述した彼女の特長が生きるよう「リピートあり」での演奏です。したがって演奏時間も75分前後になりましょうけれど、きっと長さを感じさせない、千変万化するバッハの音楽を堪能していただけるものになることでしょう。私自身もとてもわくわくしながら、このリサイタルの準備を進めています。日曜日の夜ですが、ご来場賜れれば幸いに存じます。
日時・場所
2025年11月9日(日)18:00開演(17:30開場)
横浜市青葉区民文化センター「フィリアホール」
プログラム
J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲 BWV988
(全曲・リピートあり)